20代でのキャリアアップ転職。その前に考えておくべきこととは?
就職して数年が経ち、それなりに責任のある仕事も任されるようになった20代半ば~20代後半。
同期の中には華々しい実績を上げたり、ポジションアップしている人もいて「自分は…」と少し焦る気持ちもあるのではないでしょうか。
「キャリアアップしたい」
「ただ毎日忙しく過ぎていくだけではダメだ」
「いずれ結婚もしたい」
「もっと給料を上げたい」
そんな気持ちを持っていても、ただ漠然と考えているだけではキャリアアップにはつながりません。
しかし、ご心配なく。実は20代はキャリアアップについて考え始める最適なタイミングなのです。
これから先の長い人生で、しっかりとキャリアを積み重ねて行けるよう、20代の今、考えておくべきこと、やっておくべきことについて、国家資格キャリアコンサルタントの筆者が解説します。
20代でキャリアアップを意識することが重要な3つの理由とは?
社会人としてスタートを切ったばかりの20代のみなさん。
社会人としての基礎力をつけたり、それぞれの分野でプロになるために日々努力していることと思います。
「それだけでもう毎日が精一杯…」という声も聞こえてきそうですが、ビジネスパーソンとして今後どのようにキャリアアップしていくのかについて、20代の今からしっかりと意識し、行動していくことがとても重要なのです。
ここではその理由を3つ説明していきます。
〈理由その1〉人生の航路図は早く手に入れたほうが良い
理由の1つ目は、「人生の航路図は早めに手に入れたほう良い」ということです。
そもそも「キャリア」とは何を指すのでしょうか。
仕事の能力や実績のこと?
会社での役割やポジションのこと?
どちらも間違ってはいませんが、この記事では「人生と仕事のより良いコラボレーション」という意味合いで「キャリア」という言葉を使っていきたいと思います。
人生という航海では「どこに向かって行くのか」ということと同じくらい、「どうやって行くのか」も大切です。
「どうやって行くのか」を20代の今考え始めること、それがすなわち航路図を描き始めるということなのです。
「人生100年時代」のキャリアとは
近ごろよく耳にする「人生100年時代」というワード。
2020年の今年、政府は定年後の継続雇用を70歳まで引き上げる「高年齢者雇用安定法」の改正案を通常国会に提出する予定で、さらに近い将来、企業の雇用義務が75歳まで延長されると言われています。
20代のみなさんにはまだまだ先の話でピンとこないかもしれませんが、人生の中で職業生活を送る期間はこれまでより確実に長くなります。
生涯にわたってどのような働き方をしていきたいのか、自分なりのライフキャリアデザインをイメージしておくべきでしょう。
〈理由その2〉身軽な20代のうちにスタートを切るほうが良い
20代は、まだ独身であったり、結婚はしていても子どもはまだという人が少なくないと思います。
そのような、いわゆる「身軽な」時期はキャリアアップについて考えるのに最適と言えるでしょう。
時間やお金を自分自身の成長のために投下できる期間は案外短いかもしれません。
人生のステージでまだ役割が少ない20代
「ライフキャリアレインボー」という有名なキャリア理論があります。
アメリカの教育学者、ドナルド・E・スーパーが提唱したものですが、キャリアとは職業に関することだけではなく、人生における様々な役割のことであるとし、人はその役割を虹のように積み重ね、使い分けながら暮らしているという考え方です。
たとえば、ある一人の人は、誰かの配偶者であり、親であり、子であり、職業人であり、地域の市民であるということです。
20代はまだその役割が少ないため、キャリアアップについて考えたり、そのための勉強や経験に時間やお金を使える時期なのです。
20代なら、万一失敗しても巻き返しが可能
「若い時の苦労は買ってでもしろ」などという言葉がありますが、できれば苦労や失敗などしたくないですよね。
けれど時には、せっかくキャリアアップを狙って転職をしたのに「ここじゃなかった…」ということもあるかもしれません。
それを一つの貴重な経験として学び、次へのステップにできるのは、身軽で時間的にもやり直しがきく20代だからこそと言えます。
〈理由その3〉アーリースタート、スモールステップで進むほうが良い
これまで述べてきたように、キャリアを人生と考えると、長い人生をかけて登っていく長い階段のようなものだとも言えます。
たとえば10メートルの高さまで登って行こうとしたときに、50段の階段で登るよりも、60段の階段で登ったほうが楽に登れますよね。
キャリアの階段は、スモールステップで一歩一歩着実に登って行ったほうが良いと言えます。
そのためにも早い時期、20代のうちから登り始めることをおすすめします。
キャリアアップのために20代でまずやるべきこととは?
キャリアップのために20代でやるべき具体的なこととはなんでしょうか?
一言で言うと、ライフキャリアプランについて考え、自分の軸を持っておくということです。
この章で具体的に説明していきます。
①どんな人生で、どんな働き方をしたいのか考える
②エンプロイアビリティを身に付ける
③キャリアプランや今持っているスキルを言語化しておく
①どんな人生で、どんな働き方をしたいのか考える
まず一番大切なことは、自分はどんな人生を送りたいのか、どんな働き方をしたいのかという「ライフキャリアプラン」を立てることです。
これまでの人生を振り返りつつ、自分の軸をしっかりと決めておくことが大切です。
しっかりした軸があれば、キャリアップのための転職をはじめとした様々な選択の場面でブレることなく判断することができるでしょう。
マネジャーかプレイヤーか
ビジネスパーソンとして生きていくのであれば、マネジャーかプレイヤーかは大きな選択です。
マネジャーとして組織運営や人材育成に注力し、より高いポジションを目指していきたいのか、それとも現場のプレイヤーとしてスペシャリストの道を目指すのか。
自分はどちらに向いていてどちらに喜びを感じるのか考えてみましょう。
給与優先か生き方優先か
できるだけ高い給与を得ることを目標とするのか、それとも自分が理想とする暮らしをすることを優先し、それが叶う金額であれば幸せと感じるのか。
どのような価値観で人生を送りたいのかを考えることも大切です。
これからの新しい働き方を意識する
政府が推進している働き方改革の柱の一つに「多様な働き方の実現」が掲げられています。
テレワーク(リモートワーク)を導入したり、「地域限定社員」「短時間正社員」「業務委託」などの新たな雇用形態を作る取り組みをしたりしている企業も多くあります。
今後は働き方のダイバーシティが進み、「妻がフルタイム、夫が短時間勤務で家事や育児を主体となって担う」などは珍しいことではなくなるでしょう。
大切なのは、働き方を変えて生み出された時間を何に充てるか、自分なりの考えを持つことです。
キャリアアップについて考えるとき、「働き方」についても意識すると「どんな人生で、どんな働き方をしたいのか」が見えてくるかもしれません。
②エンプロイアビリティを身に付ける
エンプロイアビリティ(employability)とは、雇用される能力のこと。Employ(雇用する)とAbility(能力)を組み合わせた言葉で、キャリアアップに欠かせないものです。
厚生労働省の資料によると、エンプロイアビリティは次のようなものです。
- 職務遂行に必要となる特定の知識・技能などの顕在的なもの
- 協調性、積極的等、職務遂行に当たり、各個人が保持している思考特性や行動特性に係るもの
- 動機、人柄、性格、信念、価値観などの潜在的な個人的属性に関するもの
引用元:厚生労働省「エンプロイアビリティの判断基準等に関する調査研究報告書概要」エンプロイアビリティは日々の仕事の中で培われていくものも多いため、常に目標を持って日々の業務を行うことがキャリアアップにつながっていくと言えます。
ポータブルスキルとテクニカルスキル
エンプロイアビリティを、より具体的に示したものが「ポータブルスキル」と「テクニカルスキル」です。
厚生労働省が提唱する「ポータブルスキル」とは、「業種や職種が変わっても通用する、持ち出し可能な能力」とされており、下記の図の「仕事のし方」「人との関わり方」を指します。
コミュニケーション力、リーダーシップ、課題発見力、調整能力など、「仕事を進める力」「やり遂げる力」といった、どの会社に移っても使える能力のことです。
画像引用元:一般社団法人 人材サービス産業協議会「“ポータブルスキル”活用研修 講義者用テキスト」
また、上の図の左、「専門技術・専門知識」は、「テクニカルスキル」とも呼ばれ、特定の分野についての実務経験や知識を指します。
例えば、「WEBエンジニア歴5年」「経理、財務の経験8年」といった、職務経歴書の項目として書くものです。資格やTOEICの点数なども「テクニカルスキル」です。
③キャリアプランや今持っているスキルを言語化しておく
ここまで述べてきたように、ライフキャリアプランについて考え、自分の軸を持っておくこと、今現在自分が持っている能力、まだ身につけられていない能力を整理して、言語化しておくことは今後のキャリアアップ活動にとても役に立ちます。
また、整理して言語化すること自体がキャリアアップにつながります。
キャリアアップに転職エージェントを有効活用しよう
ライフキャリアプランを作る、スキルの棚卸しをする、などと言われても何からどう始めたらいいのやら…と尻込みしてしまう人も多いと思います。
そのような作業を一人でやるのは誰だっておっくうですし、一人でやっているとどうしても詰めが甘くなってしまいます。
そんな時は転職エージェントに登録して、スキルの棚卸しや今後のキャリアプランを立てる手伝いをしてもらいましょう。
転職エージェントに登録しても必ず転職をしなければならないということはないので安心して相談しましょう。
20代のキャリア相談におすすめの転職エージェントと、相談のしかたや注意点はこちらの記事で詳しく解説しています。
「キャリアアップ」と「キャリアチェンジ」の違いとは?20代ではどちらを目指すべき?
キャリアについて語られるとき、「キャリアアップ」「キャリアチェンジ」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
ここでは「キャリアアップ」と「キャリアチェンジ」それぞれの意味と違いについて、また、20代ではどちらを目指していけば良いのかを説明していきます。
「キャリアアップ」とは
この記事でも繰り返し述べてきたように「人生と仕事のより良いコラボレーション」を「キャリア」と位置付けたとき、それを自分自身が満足できる、より良いものにしていくことが「キャリアアップ」と言えるでしょう。
「キャリアチェンジ」とは
それでは「キャリアチェンジ」とは何でしょうか。
様々な解釈があるとは思いますが、筆者は「キャリアアップ」をしていく中で、大なり小なり方向転換をすること、舵を切ることと考えます。
たとえば、これまでとは違う職種に転職する、生活の拠点を別の土地に移して仕事も変える、フリーランスになる、といったことです。
「キャリアアップ」と「キャリアチェンジ」20代で目指すべきはどっち?
20代の今、「キャリアアップ」を目指すべきなのか、それとも「キャリアチェンジ」を狙うべきなのか。
一つの考え方として、「ポータブルスキル」を基準にすることができます。
自分にはすでにポータブルスキルが備わっていると思える人はキャリアチェンジのチャンスかもしれません。
一方、まだ充分にポータブルスキルが身についていないと思える人は、キャリアチェンジには時期尚早かもしれません。
もしキャリアチェンジに挑戦するにしても、移った先がポータブルスキルを身につけられる環境かどうかを見極めることが重要です。
転職によるキャリアアップ・メリットとデメリット
キャリアアップの方法として真っ先に思い浮かぶのは「転職」ではないでしょうか。
キャリアアップのために転職するなら、「給料はこれまでより高くしたい」「収入アップは必須」と考える方が多いと思います。
しかし、給料アップだけにこだわって大切なことを見落とさないように注意したいものです。
転職先でやりたいことができるか、身につけたいスキルを得ることができるか、求めている働き方ができるか、そういったことも考えて転職先を選ぶようにしましょう。
この章では、キャリアアップ転職のメリットとデメリットについて説明していきます。
キャリアアップ転職のメリット:「キャリアビルダー」を目指そう
キャリアアップ転職の最大のメリットは、これまでの経験を活かせることでしょう。
これまでの経験やスキルを存分に発揮して、前職ではできなかった仕事ができる、給料がアップする、ポジションが上がる、やりたかった仕事ができる、新たなスキルを身につける、そんな転職ができたら最高ですね。
計画的に転職してキャリアを積み重ね、収入や待遇をアップさせている人を「キャリアビルダー」と言います。
キャリアビルダーはその時その時の業務で優秀な成績を上げる、ポジションアップする、キャリアアップのための資格を取得するなど、次のステップにつながる実績を積んでから次の転職をするという行動をとっています。
キャリアアップ転職のデメリット:「ジョブホッパー」にならないように
「ジョブホッパー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
ジョブホッパーとは、2~3年ごとに転職を繰り返している人のことを言います。
こうした転職を繰り返せば繰り返すほど、次の転職に不利になり、キャリアアップとは程遠い道を歩むことになってしまいます。
ではなぜジョブホッパーになってしまうのでしょうか。
それはキャリアの航路図を持っていないからです。
今の会社は給料が安いから、やりがいがないから、やりたい仕事ができないから…というように、現状の不満から逃げるための無計画な転職になってしまうと、次の転職先でもまた別の不満が生まれてしまい、さらに転職を繰り返すようになるのです。
キャリアアップ転職には転職エージェントを活用しよう
キャリアアップ転職のメリットを最大化し、ジョブホッパーにならないようにするための最良の方法は、転職エージェントを利用することです。
転職先が同業種、同職種だったとしても、行ってみたらこれまでの経験がほとんど活かせなかった、などということもあります。
そんなことにならないように、転職エージェントが持つ情報量とノウハウを活用しない手はありません。
キャリアアップ転職といっても目指す形は人それぞれ。
あなたに合ったキャリアアップが叶う近道や方法を知っているのが転職エージェントなのです。
転職エージェントをもっと知りたい方へ
転職エージェントについて詳しく知りたい方は、この記事を参考にしてください。
転職エージェントを初めて使う人にもわかりやすく、上手に使うコツや、注意点を解説しています。
転職以外でもキャリアアップはできる?
もちろん、転職だけがキャリアアップの手段ではありません。
転職以外にどのようなキャリアアップの方法があるのでしょうか。
①資格取得、スキルアップのために学ぶ
②副業をする
③起業する
④U・I・Jターンなど、生活拠点を移す
①資格取得、スキルアップのために学ぶ
今すぐに転職をするのではなく、資格取得や、スキルを磨くための学びを通じてキャリアアップを図る道もあります。
注意すべきは「何かしら資格を取ればいずれ転職に役立つだろう」という無目的な見切り発車です。
自分がなりたい姿に近づくために必要な資格は何か? その資格を取ることでキャリアアップができるのか? しっかりと調べてから行動するようにしましょう。
②副業をする
働き方改革を推進している政府は、企業に対して従業員の副業や兼業を認めるよう促しています。
その流れに応じて、大企業を中心に副業を認める企業が増えています。
副業をうまく活用することで、キャリアアップにつなげることが可能です。
本業の勤務先では得られないスキルを身につけることができたり、人脈が広がることもあるでしょう。
ただし、本業のスキルアップや将来のキャリアアップにリンクしていない副業を選んでしまうと、キャリアアップにつながらないだけでなく、キャリアアップのための勉強に使えるはずの時間まで奪われてしまうことになりかねません。
③起業する
転職以外のキャリアアップとして「起業」という選択肢もあります。
起業というと、とてもたいへんなことのように感じるかもしれませんが、最近は週末だけの副業として小さく始めるという例も多くあります。
ただ、いくら小さく始めるとはいっても、起業にはそれなりの資金が必要です。
そしてその資金は回収できないリスクもありますので、資金をかけても何かしらの経験やスキルが残るかどうかなどもしっかり検討しましょう。
④U・I・Jターンなど、生活拠点を移す
地方への移住と就業の推進が、地方創生の観点から政府主導で行われています。
東京から地方に U・I・Jターンして就業する人に対して、最大100万円の移住支援金を給付(各種条件あり)などといった手厚い施策が用意されています。
「ライフキャリアデザイン」でライフデザインのほうにウェイトを置いた場合、生活の拠点を移すということはキャリアアップの一つの形だと言えるでしょう。
参考:内閣官房・内閣府 総合サイト 地方創生 起業支援金・移住支援金のページ
まとめ
ここまでの内容を箇条書きでまとめます。
POINT
- 20代は生涯にわたるキャリアアップの大切なスタート地点。
- 自分のライフキャリアプランを早めに考えることが大切。
- 転職を考える際も自分の軸を持ち、キャリアアップにつながる行動を。
- キャリアアップ転職には転職エージェントを利用しよう。
- 転職以外にもキャリアアップの方法はある。
「キャリアアップ」においては、“決めた目的地に向けてまっすぐに、順風満帆に進むことがベストである” そんな誤解をしている人もいるのではないでしょうか。
そもそも、初めからはっきりした目的地がある人などほんの一握りです。
多くの人は「あそこに行けたらいいな」くらいのぼんやりとしたイメージしかなかったり、もしくは目的地を決められないままにキャリアのスタートを切るのです。
そして、前進したり、曲がってみたり、時には戻ったり、寄り道をしたりしながら、
「ああ、こういう仕事もあるのか!」
「こういうことが自分に向いていたのか!」
と試行錯誤をも楽しみながら歩んでいく、これがキャリアを作っていくことなのです。