退職の切り出し方を解説~円満退社のために気をつけたいことも
転職先が決まってホッとしたのも束の間、次に待っているのが「退職交渉」です。
今の会社をスムーズに円満退社するには、退職の切り出し方がカギを握ります。
今回は、転職エージェントで多くの方の退職交渉をサポートしてきた私の経験をもとに、退職の切り出し方を詳しく紹介します。
上司の引き止めをかわすポイントもお伝えしているので、ストレスなく退職したい人は参考にしてみてくださいね。
退職の切り出し方を3STEPで解説~切り出し方の注意点も
退職を切り出すときは、順番を守ることが大切です。
以下の順番を守りましょう。
- 退職の準備
- 上司のアポを取る
- 上司に退職を伝える
退職は、かなり繊細な問題です。
慎重に行動しないと、同僚や上司との関係をかなり悪くしてしまう可能性も……。
これからお伝えするステップを着実に踏んで、円満退社を目指しましょう。
【退職の切り出し方①】退職の準備をしよう
はじめは、退職の準備からです。
以下の2つを考えてください。
- 退職日をある程度決めておく
- 本当に辞めるか改めて考える
それぞれ説明しますね。
退職日をある程度決めておく
上司に退職を告げる前に、退職日をある程度決めておきましょう。
退職日を決めていないと、「本当に辞める気があるのかな?」と上司から思われてしまい、引き止めにあうスキを与えてしまいます。
退職日は、退職を伝えてから1~2か月後が一般的です。
業務の引継ぎ、有給消化といったことを加味して退職日を決めましょう。
本当に辞めるかを改めて考える
退職を切り出す前に、いま一度考えておきたいのが「本当に辞める覚悟があるか?」といったことです。
万が一、上司に退職を伝えたあとに「やっぱ辞めたくない……」と撤回したとします。
この場合、上司はもちろん、会社からの評価が下がることは確実です。
「1回辞めようとした社員」という目で見られ、居心地が悪くなることもあるでしょう。
とくに、現職に不満があって転職活動をして、運よく次の転職先が決まった人は要注意です。
現状への不満や特定の人に対する憤りからくる転職は、あとあと後悔する要因になります。
いま辞めることが本当に自分のキャリアにとって大切なことか、退職を切り出す前に改めて考えるようにしましょう。





監修者によるワンポイントアドバイス
自分の今後のキャリアについて冷静に考えるのが難しい、またはどうしても色々なことが頭に浮かび、なかなか自分の考えが整理できないという場合もあると思います。
また、上司や家族、友人にも本音で相談するのが難しいと感じるときは、あなたの状況を客観的にみてアドバイスができる、キャリアコンサルタントやキャリアカウンセラーに相談してみるのもお勧めですよ。
【退職の切り出し方②】上司のアポを取ろう
退職の準備が終わったら、つぎは上司へのアポ取りです。
以下の3つのポイントを押さえることで、失敗することなくアポを取ることができます。
- はじめは直属の上司に話をする
- 退職を切り出すタイミングは繁忙期を避ける
- 上司のアポ取りはメールではなく直接伝える
それぞれ解説します。
はじめは直属の上司に話をする
退職をはじめに切り出す相手は、直属の上司です。
評価者が課長なのに、課長を飛ばして部長に退職を切り出すのはNGです。
課長からすると「自分が飛ばされた」と思い、心象を悪くしてしまいます。
ちなみに私が転職したときも、まずは直属の上司であった課長に退職の話をしました。
そして、課長から部長に話を通してくれて、部長を交えた場をセッティングしてくれましたよ。
退職を切り出すタイミングは繁忙期を避ける
退職を切り出すときは、できるだけ繁忙期を避けましょう。
退職の報告をされるのは、上司としても気が気でないことです。
腰を落ち着けて、話し合いをもちたい話題でもあります。
常に忙しい職場の場合は、お昼の時間や、就業後の時間をもらうようにしてもよいですね。
日中は上司も忙しく、「お話があるんですが……」と切り出しても後回しにされてしまうこともあるでしょう。
ちなみに、退職を切り出すときは誰もいない部屋を押さえましょう。
ほかの社員に聞かれてしまい、不要なウワサが流れてしまうことは避けたいですね。
上司のアポ取りはメールではなく直接伝える
上司のアポ取りをするときは、直接伝えるようにしてください。
メールだと、軽い印象を与えてしまいます。
あくまで礼儀として、直接アポ取りをするようにしましょう。
以下のように伝えるのがおすすめです。
課長、お忙しいところ申し訳ございません。
少しお時間をいただきたいことがあり、直近で15分ほどご都合がよろしいお時間はございますでしょうか?
後ほど詳しく説明しますが、「相談したいことがあるのですが」と伝えるのはNGです。
退職交渉は、あくまで退職の意思を伝えることが大切です。
アポを取るときは、「お時間をいただきたい」くらいに留めておくとよいですね





監修者によるワンポイントアドバイス
退職の意思を伝えるためのアポをとろうとする時に、勘が働く上司ならば転職の話かもしれないという察しがつくものです。
その場合、その場で「何の話?今この場で話して。」などと言われることもあるかも知れません。
そうなって慌てないように、上司の性格や行動パターンなどを踏まえ、そのような状況に追い込まれても冷静かつおだやかに退職の意思を伝えられるように心の準備をしてアポをとるための話しかけをするようにしましょう。
【退職の切り出し方③】上司に退職を伝える
アポ取りが終わると、いよいよ上司に退職を伝えることになります。
退職を伝えるときは、以下の2つに気をつけましょう。
- 決意を伝える
- 退職日は厳密に伝えない
それぞれ、説明します。
相談はNG!決意を伝えよう
退職を切り出すときは、決意を伝えてください。
くれぐれも相談というワードを使わないように気をつけましょう。
【良い退職の切り出し方】
「退職を決めましたので、お時間を頂きました」
「退職することを決意しましたので、ご報告させていただきます」
【悪い退職の切り出し方】
「退職を考えてまして……」
「退職をしようと思いまして、ご相談をさせていただきたく……」
退職交渉で最も避けたいのが、上司の引き止めにあうことです。
上司としては、自分の部下が退職してしまうと、少なからず上司自身の評価にも影響してきます。
そのため、いろいろな理由をつけて退職を思いとどまらせるように動くことがあるんですね。
そして、「退職をしようと思っている」といった曖昧な意思表示をしてしまうと、「まだ会社に残る可能性も考えているかもしれないな」と上司に思われてしまいます。
退職を伝えるときは、「辞めます」ときっぱり伝えるようにしましょう。
退職日は厳密に伝えない
退職を決めたことはきっぱり伝えるべきですが、退職日に関しては詳しく伝えないほうがよいでしょう。
「この日に次の会社に行くことが決まってるんで」と伝えてしまうと、上司の気分を害してしまいます。
無事に退職が認められても、業務の引継ぎや、部署によっては送別会を開いてくれるところもあるでしょう。
退職日までに、上司や同僚と過ごす時間は残されています。
雰囲気よく円満退社するためには、一方的に退職日を伝えることは避けましょう。
「退職日はこの日を考えていますが、部署のみなさんのご都合によって柔軟に考えさせていただきます」といったように伝えることが望ましいですね。
転職が理由で退職するときの伝え方
ちなみに、転職が理由で退職するときは以下のように伝えることがおすすめです。
私が転職エージェントでサポートしていた方にも、同じようにアドバイスしていた伝え方です。
この度、退職を決意いたしました。
理由としては、新たに挑戦したいことが見つかったからです。
◯◯(現在の会社)でできないか、かなり考えましたが、この先のキャリアを考えると次の環境にチャレンジすることが必要という結論にいたりました。
実は、縁あって次の会社も決まっております。
このようなご報告となり、申し訳ございません。
今後の業務の引継ぎ、また退職日につきましては、~~(上司)さんとお話ししつつ決めさせていただければと思います。
退職の引き止めにあった!?そんなとき気をつけるべき3つのこと
退職を切り出して、そのまま退職が認められれば安心ですよね。
しかし、退職の引き止めに合う可能性もゼロではありません。
そこで、退職の引き止めに合ってしまった場合に意識したいポイントを3つお伝えします。
- 辞める意思が固いことはぶらさない
- 「会社都合」の退職理由を伝えない
- 次の上司の予定をすぐに押さえる
引き止め対策するならこちらもチェック!
退職の意思を示した途端、上司や様々な人が引き止めてくるでしょう。
もしあなたが退職の意思をはっきり持っているなら、以下の記事を参考にしながら引き止め対策を行いましょう。
辞める意思が固いことはぶらさない
退職の引き止めに合った場合は、甘い言葉に惑わされないことが大切です。
上司は、あの手この手を使って退職を引き止めにかかります。
「希望のポジションに異動できるように調整するから」「業務量を減らせるように部長と相談してみるよ」といった言葉に惑わされないように注意しましょう。
これらは、引き止めのための口実に過ぎないことが少なくありません。
繰り返しになりますが、退職を決めたら決意はブラさないことです。
引き留めに合った場合でも、「辞めることを決めています」といった意思を貫いてください。
意志が固いことを示すことで、上司が折れてくれます。
「会社都合」の退職理由を伝えない
引き止めにあったときに注意したいのが、「会社都合」の退職理由を伝えてしまうことです。
「会社都合」とは、「給料が少なくて」「残業が多くて」といったことです。
上司からすると、こうした理由は引き止めの口実にしやすくなります。
たとえば「給料が少ない」という転職理由の場合、「実は評価を上げようと考えていたんだよ。だから、次の賞与の増額も検討しているんだ」といった引き止めの口実を与えてしまいます。
退職の意思をブラさないためには、上司からの甘い言葉をシャットダウンすることが大切です。
引き止めにあったときこそ、「スキを与えない」といったことは強く意識しましょう。
次の上司の予定をすぐに押さえる
退職を伝えて認められなかった場合、その場で次の上司の予定を押さえてください。
その場で次の話し合いの機会をつくらないと、ズルズルと退職交渉を引き延ばされてしまいます。
実際に、私が転職エージェントでサポートしていた方も、退職交渉を引き延ばされて苦労した方がいました。
その方は1回目の退職交渉で退職が認められず、その話し合いが終わった次の日に2回目の場を設けてもらうように上司に伝えました。
ただ「忙しいからちょっと待ってて」と言われてしまい、2週間後におこなうことに。
結果として、交渉を3回した後に退職を認められましたが、次の会社の入社日をずらすことになってしまいました。
退職交渉が長引くほど、上司に交渉をリードされてしまい、転職先の会社に迷惑がかかることもあります。
自分で退職交渉をリードするためには、「次の話し合いの場をすぐに決める」といったことを意識することが大切です。
これってどうなの!?退職の切り出し方Q&A
転職をサポートしていた方から、退職の切り出し方に関してよく受けた質問に答えます。
- 退職届って準備しておいたほうがいいの?
- 就業先を聞かれたら?
- 民法の「2週間前規定」って何?
1. 退職届って準備しておいたほうがいいの?
退職を切り出す場では、退職届を出す必要はありません。
そもそも退職届は、法律で提出が義務づけられているものではありません。
退職交渉のときには退職届は不要ですが、会社によっては退職が上司に認められた場合に、「証跡」として提出を義務づけているところも。
社員(従業員)が退職を申し出る場合、就業規則にその場合の手続きについて指定されている場合があります。
したがって、まずは会社の就業規則に退職手続きについての規定がないか、確認することが大切です。
上司や、人事部に聞いてみるとよいでしょう。
ちなみに、退職届と似たような名前のものに退職願があります。
退職願は、退職を相談するために提出するものです。
基本的には準備しないものと考えて大丈夫です。
これまで説明してきたとおり、退職交渉では相談はNG。
退職願は「退職してもよろしいでしょうか?」といった意味合いのもののため、提出は不要と言えます。
もし口頭で伝えただけは退職の希望を受け入れてもらえないという場合は、「退職願」を書面で提出し、正式な意思であることを示すことができます。
また、「退職届」は就業規則の規定に従って、提出のタイミングなどを人事・総務に確認して提出するものですが、あくまでも退職が確定してから提出することになります。
2. 就業先を聞かれたら?
上司によっては、「次はどこに行くの?」と聞いてくることがあるでしょう。
この場合、次の会社の名前は言わなくてOKです。
「あの会社は辞めておいたほうがいい」といったように、引き止める口実を与えてしまうことにつながるからです。
退職交渉では、必要最低限のことしか伝えないことが基本です。
「退職します」という決意以外は、具体的なことは言わないほうが良いでしょう。
ただし、上司や人事担当者が現職で得た会社の内部情報の漏洩について懸念している場合もありえるため、転職後も守秘義務を負うことをあらかじめ伝えるなど、不要な疑念を抱かれないように配慮する必要があるかもしれないことを考えておきましょう。
3. 民法の「2週間前規定」って何?
退職について調べていると、民法の「2週間前規定」という言葉に出会うかもしれません。
これは簡単にいうと、「退職が認められなくても、労働者の権利として退職日の2週間前に退職を会社に伝えれば退職が認められる」といった規定です。
しかし現実問題として、2週間で業務の引継ぎなどをおこなうことは大変です。
有給を消化して、休んでから次の会社に転職したいといった気持ちもあるでしょう。
「2週間前規定」を使うのは、どうしても退職が認められない場合の最終手段と考えておきましょう。
退職の切り出し方は流れが大切!漏れのないように注意しよう
退職を切り出すのは、かなり神経を使うことです。
上司に退職を伝えることを考えると、ナーバスな気持ちになる人もいるでしょう。
しかし、いざ退職を決めたからには、退職交渉は避けては通れません。
そして、退職の引き止めに合うことのほうが、退職を切り出すことよりもメンタルがやられるのも事実です。
今回紹介したステップを守って、円満退社に向けて退職交渉を成功させましょう。





監修者コメント
上司からの引き留めに合うかも知れないと思う場合は、意思を伝える際には何を言われても冷静さを失わずに対応するように、あらかじめ心の準備をしましょう。
この先の皆さんの長いキャリアの中で、現在の職場の上司や同僚と何年後かにどこかで新しいビジネス関係で関わることがあるかも知れません。
人生100年時代のビジネスの可能性を考えれば、できるかぎり円満な形で退職して次へ進むのが賢者の行動であり、得策だと思います。