転職・退職前の人に贈る、まとめて有給消化マニュアル【保存版】
皆さんは、「退職前にたまっている有給をまとめて消化できるのだろうか」と疑問に感じていませんか?
結論として、退職前にまとめて有給を消化することは法律上可能です。
しかし「仕事が忙しい」などの理由で、すべての有給を消化できていないのが現状ですよね……。
退職前のスムーズな有給消化を実現するための2つのコツを徹底解説。
本記事を読んで賢く有給を消化し、円満退社を実現しましょう!
退職する準備はできていますか?
この記事は、転職意思を上司に伝えたときに想定される「引き止め」への対処法を解説しています。
退職の意思を伝える基本的なステップや、抜け漏れのない業務引き継ぎのやり方などは、以下の記事で詳しく説明しています。あわせてご覧ください。
- 転職・退職の伝え方【アポ取りから実際の例文まで】
「ご相談があります」と切り出すのはダメ?退職届も用意すべき?……退職を伝えようとしている全ての人が知るべき知識 - 円満退社は引き継ぎの成否に懸かっている
引き継ぎされる側はこう思っている!4つの観点から引き継ぐことを整理して、業務を気持ちよくバトンタッチしよう
転職・退職前の有給消化をスムーズにする2つのコツ
「有給はすべて消化できる!」とはいえ、スムーズに消化できる方法を知らなければ、すべて消化できないまま退職・転職してしまうことになります。
- 有給消化・引き継ぎの日数を考慮して退職日を設定する
- 労働基準監督署に報告するのは最終手段
これら2つのコツを理解しておけば、有給をすべて消化できる可能性はグッと上がるでしょう。
1. 有給消化・引き継ぎの日数を考慮して退職日を設定する
何よりもまず大切なのは「退職日の設定」です。
ちゃんと退職手続きを完了させないまま転職してしまうと、二重労働(詳しくは後述)になってしまいますので、ご注意ください。
ポイントは、残りの有給休暇や引き継ぎに要する日数を考慮して、上司と退職日について相談することです。
多くの場合、就業規則で「退職日から最低でも1ヶ月以上前に、退職の意思を報告する」と設定されています。
引き継ぎが上手くいかない?
転職前の引き継ぎは、誰もが通る道です。
しかし、賢い方法を知っておかなければ、転職前にアタフタすることも。
こちらの記事から、転職前の引き継ぎをスムーズに終わらせる方法を学びましょう!
退職日を決定すると、そこから逆算して引き継ぎにかかる期間を考えて、有給が取得できる具体的な日数が見えてくるでしょう。
有給休暇の日数は勤続年数により決まっており(詳しくは後述)、残り日数は給与明細に記載されていることが多いです。
実際に退職時の有給消化について申請する場合は、「退職のための有給消化」という理由で申請して問題ありません。
このときに注意しておきたいのが、「引き継ぎが不十分な状態で有給消化をするのはNGである」ということです。
引き継ぎが不十分だと、もちろん企業にとって不利益となりますし、何より自分の希望通り休めない可能性があります。
上司に「無責任だ!」と引き止められる可能性もありますし、円満退社とも言いづらいですよね。
転職先との兼ね合いもありますが、退職時期を繁忙期とずらすなど配慮することで有給も消化しやすいでしょう。
有給消化中だとしても、あなたはそこに在籍している社員です。
「有給を消化したい意思を優先しすぎて、現職の人たちに迷惑をかけるのはNGである」という意識は常に持っておきましょう。



ワンポイントアドバイス!
すべての有給休暇をまとめて消化するためには、退職日ではなく有給消化の初日から逆算して上司に退職の意思を伝えましょう。
例えば20日の有給が残っている場合は、遅くとも1ヶ月+20日にその意思を伝えるのがGOODです。
こうすることで、「引き継ぎや残務処理が終わらず、有給消化のはずが出勤することになった」という事態になる可能性を防ぐことにつながります。
2. 労働基準監督署に報告するのは最終手段
現職の状況や雰囲気によっては、退職時の有給消化がなかなか認めてくれない場合もあるでしょう。
有給休暇は労働者の権利であり、本来企業側は拒否できません。
それにもかかわらず、社内の人に相談しても「今忙しいから」などの理由で有給消化が認められない場合が続いたら、労働基準監督署へ相談してみましょう。
全国に321拠点あり、監督課に相談すれば企業側が法律に違反している部分を教えてもらうことができます。
有給消化に関して、労働基準監督署が勤務先と直接交渉してくれるケースは少ないようです。
しかし、現職で話し合いをする際に「労働基準監督署側はこのように言っていました」というように引き合いに出してみると、交渉に応じてくれるでしょう。
注意しておきたいのが、あくまでもこれは、どうしても有給消化が認められない場合の最終手段であることです。
有給消化が認められない場合は、直属の上司がチームや部署の事情を考えて個人的に認めていないケースが多いです。
そのため、労働基準監督署に相談する前に、さらに立場が上の人や労務関係などの担当部署に相談してみるのが良いでしょう。
一方で、有給消化が認められない理由が単なる嫌がらせではなく、引き継ぎが不十分など退職者側にも問題がある可能性もあります。
そのように感じたら、一度退職日や有給消化のスケジュールを見直してみると、上司側も軟化するかもしれません。
とにかく、まずは引き継ぎなどのスケジュールに余裕を持って、退職の意思を上司に伝えるのが大切だと言えますね。
今さら聞けない有給休暇の仕組みとは?
実際に働いている中、必ず「有給休暇」という言葉を耳にするとは思いますが、そもそもあなたはこの制度についてどれくらい知っていますか?
基礎知識として有給休暇の仕組みを理解しておくことで、有給消化をスムーズに行うことができるでしょう。
- 有給休暇の定義ともらえる日数
- 「時季変更権」とはなにか
これらに分けて解説します。
有給休暇の定義ともらえる日数
有給休暇とは正式には年次有給休暇といい、雇用主から賃金が支払われる休暇日のことであ、労働者の権利とされています。
日本では、労働基準法で以下のように定められています。
労働基準法第39条第1項:
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
- 雇い入れ日(入社日)から6カ月以上継続勤務している
- 出勤すべき労働日のうち8割以上出勤している
これらの条件を満たせば有給休暇が与えられ、その日数は勤続年数に比例し、以下のように増加していきます。
画像引用:厚生労働省ホームページ
年次内に取得できなかった有給休暇は、翌年に繰り越されます。
2019年4月から「働き方改革」として年に5日、すべての企業が労働者に有給を取得させるよう義務付けられたことは、よく覚えていらっしゃるのではないでしょうか。
この際に労働基準法も改正され、以下のように定められました。
労働基準法第39条第7項(一部省略):
使用者は、有給休暇の日数のうち五日については、一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。
また正社員でなくとも、パートやアルバイトなどのパートタイム労働者も有給休暇を取得できます。
有給休暇をもらうための条件は変わりませんが、正社員と比べてもらえる有給休暇の日数は少なくなります。
画像引用:厚生労働省ホームページ
つまり、企業側の「パート・アルバイトに有給なんかねぇ!」という主張は事実に反しているのです。
そのように言われた人は、上司のさらに上司に問い合わせてみるか、就業規則をしっかり確認してみましょう。
「時季変更権」とはなにか
時季変更権とは繁忙期など労働者に休まれると非常に困る場合、企業が申請された有給休暇日とは別の日に、労働者に対し有給休暇を与えることができる権利です。
労働基準法では以下のように定められています。
労働基準法第39条第5項(一部省略):
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
「こんなの、いくらでも有給休暇日を変えられるじゃないか!」と思われるかもしれませんが、安心してください。
退職直前の有給消化の場合、そもそも変更先となる勤務日が存在しません。
そのため会社が時季変更権を行使することはできないのです。
しかし、企業によっては上司が時季変更権について部分的にしか理解しておらず、「こちらの都合でいつでも有給休暇を変えることができる」と考えている可能性があります。
その場合、労働基準法について詳しい人事や総務に相談してみてもいいかもしれませんね。
こんな時どうする?転職・退職前の有給消化でよくある疑問
事実かどうかは別として、企業によって言い分がかなり違うので、有給消化に関してわからない点も多いのではないでしょうか?
そこで、
- 余った有給休暇は買い取ってもらえるのか?
- 有給消化中に、転職先で働き始めてもいい?
- 二重労働がOKの場合、社会保険はどうなる?
- 退職金やボーナスが減らされることはある?
これらをピックアップして、解説していきます。
1. 余った有給休暇は買い取ってもらえるのか?






仕事の引き継ぎが忙しくて、有給休暇をすべて消化できない。
この場合、企業に有給を買い取ってもらえるの?
原則として有給休暇の買い取りは、労働基準法第39条第1項の観点から禁止されています。
しかし、退職前に消化できず余ってしまった有給休暇に関しては、買い取りが例外的に認められているところもあります。
買い取りは企業の義務ではないので、企業によって有給の買い取りへの対応は十人十色です。
買い取り金額に関しては、企業が独自に決定できます。
金額が法律で定められていると、「有給を買い取ってもいい」ということになりますからね。
つまり買い取ってほしいと申請しても、必ずそのとおりになるとは限らないのです。
有給を買い取ってもらいたい場合は、まずは就業規則を確かめてみましょう。
買い取り規定がある場合は、すべて就業規則に書かれています。
2. 有給消化中に、転職先で働き始めてもいい?






転職先の入社日までに、有給休暇をすべて消化できなさそう。
転職先で働きながら、現職の有給消化はできる?
有給消化中に転職先で働くことは、「二重労働」とされます。
違法というわけではありませんが、二重労働により減給や懲戒免職等のペナルティが課される場合もあります。
この点は企業によって異なりますので、現職の就業規則で二重労働についての規定がないかどうか必ず確認しましょう。
もし転職先から「有給消化中でもいいから来てほしい」と言われた場合は、必ず前職の上司や人事の方と相談しましょう。
転職前の有給消化は労働者の権利なので、全く問題もありませんが、有給消化中も現職と雇用契約を結んでいることを忘れないでください。
「どうせ退職するんだし、ルールを破ってもいいや」という考え方はNGです。
ルールを破って二重労働していたことがバレると、転職先にも報告される可能性があり、あなたの信用問題に関わります。
二重労働の禁止は、短期アルバイトなどにも適用されます。
3. 二重労働がOKの場合、社会保険はどうなる?






現職は二重労働がOKで、転職先にも了承を得て働いている。
この場合、社会保険はどちらで加入しているの?
二重労働がOKだとされ有給消化中に転職先で働いている場合、転職前の企業と転職先の両方で健康保険・厚生年金・労災保険に加入していることになります。(二重加入)
二重労働していない場合は、もちろん転職前の企業で加入していることになります。
一方で、雇用保険は少し事情が異なるので注意してください。
たとえ有給消化中でも、在職している企業の雇用保険を喪失しなければ、転職先の企業で雇用保険の手続きができません。
二重労働をしている場合は、転職前の企業で「雇用保険の資格喪失手続き」を必ずしてもらいましょう。
4. 退職金やボーナスが減らされることはある?






退職前に有給消化して、退職金が減らされることはある?
あと、有給消化中にボーナスってもらえる?
実は退職金やボーナスに法的な規則はありません。
これらはあくまで企業が設定するものですので、そのルールは企業によって変わってきます。
キャリアの海が調査したところ、引継ぎが不十分な場合に退職金が減額されるケースがあるようです。
引き継ぎは完璧にできてますか?
退職時の業務引き継ぎ、正直ちょっと不安があるな……という方は、以下の記事をご覧ください。
- 円満退社は引き継ぎの成否に懸かっている
引き継ぎされる側はこう思っている!4つの観点から引き継ぐことを整理して、あなたが今やるべきことをはっきりさせよう
またボーナスは原則として、有給消化中でも会社に在籍中であれば受け取る権利があります。
ただし、こちらも有給消化中であることを理由に減額されることがありますので、注意しておきましょう。
退職金も同様ですが、まずは現職の就業規則を確認し、それでも不明な点があれば社内の担当者に問い合わせてみましょう。
転職前、有給消化中の過ごし方はどうする?
いかがでしたか?
本記事を読んで、有給休暇の仕組みについて理解した上で、私が解説した2つのコツを実践してみましょう。
余裕を持って退職前の手続きをすれば、より長い有給消化期間を過ごせますよ。
そこで気になるのが、「有給消化期間の過ごし方」ですよね。
二重労働がダメならどうしようと考える人も少なくないはず。
大手人材会社リクルートキャリアの調査では、有給消化中の過ごし方は以下のようになっています。
画像引用:リクナビNEXT
国内旅行や海外旅行、里帰りなどリフレッシュできることをしているようですね。
退職・転職を機に、あなたも一度リフレッシュして、次の職場に臨んではいかがでしょうか?



監修者からの一言
次の職場がすでに決まっている中で有給を消化していこうと考えている場合、気持ちがすでに次の仕事にむいてしまって引き継ぎが疎かになったり、時期などあまり考慮せずに取得してしまう可能性もあります。
そうなると、今回の記事でご紹介しているようなボーナスの減額や退職金に影響されるリスクもありますので、自分の中できちんとプランを立てて退職の道筋を考えていくことが重要なポイントですね。