転職時に源泉徴収票の提出は必要?提出しなくていい方法が実はある
転職時に求められるのは、転職前の企業の源泉徴収票。年末調整をするのに必要な資料です。
しかし、「そもそも源泉徴収票って提出する必要があるの?」と、疑問を持たれる方もいるのではないでしょうか?
そこで今回は、転職時に源泉徴収票は必ずしなければならないのか、源泉徴収票のもらい方や、もらえない場合の対処法を徹底解説いたします。
なおこの記事は、国家資格「キャリアコンサルタント」の資格を持ち、実務経験もある専門家に監修をしていただいています。
源泉徴収票とは?
そもそも源泉徴収票とは何でしょうか?何のための書類なのでしょうか?
わかりやすく解説していきます。
そもそも源泉徴収票って何?
源泉徴収票とは、勤めた会社でいくら源泉徴収がされたのか、その納税金額が記してある書類のことです。
書式としては、次の図のようになっています。
画像出典:国税庁
この源泉徴収票ですが、手元に届く際には特に注釈もなく、ポンと渡されることが多いんです。
そのため、重要な書類ではないと思い、捨てたりなくしたりしがちです。
しかし、こちらは重要な書類ですので、手元に届いたら必ず保管しましょう。
なぜこの書類が重要なのか、その理由や使い方は、この後解説していきます。
源泉徴収票って転職時に必要?
源泉徴収票は、転職した際に基本的には提出が求められます。
なぜなら、転職先で年末調整を行う際に必要だからです。
しかし、「年末調整に必要だから」と言われても、なぜ必要なのか、ピンとこない方もいるかもしれません。
なぜ転職先に源泉徴収票を提出しなければいけないのかを理解するためには、「源泉徴収」とは何か、および「年末調整」とは何かを知る必要があります。
そもそも源泉徴収とは?
源泉徴収票とは、源泉徴収をした記録であるとも言えます。
では、そもそも源泉徴収とは何でしょうか。
源泉徴収とは、あなたの毎月の給与から、会社が所得にかかる税金(所得税、復興特別所得税)を差し引き、あなたに代わって納税してくれることです。
これにより、あなたは煩わしい納税の手続きを避けて仕事に集中できますし、国にきちんと税金を収めている事になります。
ところで、徴収される税金の金額は、どのように決められるのでしょうか。
徴収される金額は、1月から12月までに得た、あなたの総所得をベースに計算されます。
ここでお気づきの方も多いかと思います。最終的な所得にかかる税金は、12月以降でないと決まらないのです。
なぜなら、あなたの総所得が確定されるのは、12月の給与をもらった後なのですから。
そこでどうするかと言うと、あくまで「概算額」として、所得にかかる税金を毎月天引きするのです。
つまり、源泉徴収とは、「あなたの所得税、復興特別所得税の概算金額を毎月天引きするもの」とも言えます。
年末調整とは?
源泉徴収で毎月天引きされる金額は、あくまで概算です。
したがって、どこかのタイミングで、1月から12月の間の総所得と所得税を確定し、多めにとった分を払い戻したり、少なければ追加で徴収したりする必要があります。
この作業は、会社務めの方の場合、基本的に会社があなたの代わりに行ってくれます。
これが、「年末調整」です。
つまり、年末調整とは、所得税および復興特別所得税を確定するために、会社が行う事務手続きのことを意味します。
転職先で年末調整を行うために、源泉徴収票が必要
まとめると、年末調整は、大きく以下のような手続きを行います。
- 社員の1年間の総所得を計算し、確定する
- 控除(基礎控除、配偶者控除、扶養控除など。課税対象となる金額を下げることができる)を計算する
- 総所得から控除を引き、課税対象となる金額を決定する
- 源泉徴収された金額と、1~3までの計算でわかった本来納めるべき金額を比較する。
本来収めるべき額よりも多く徴収していればお金を個人に還し、少なければ追加で徴収する(基本的には12月の給与で調整)
このとき、専業の会社員で、1年間同じ会社に勤めている人であれば、その会社内のみで計算に必要なデータがそろいます。
しかし、転職者のように、これまで他社で給与をもらったり源泉徴収されたりしてきた人は、そのデータを転職先に引き継がなければ、正しい金額を計算することはできません。
つまり、転職先に源泉徴収票を提出しなければならない理由は、「年末調整の手続きに必要なデータを渡すため」なんです。
源泉徴収票は、どうすればもらえるの?
ここまでの説明で、転職先に源泉徴収票を提出しなければいけない理由はおわかり頂けましたでしょうか。
源泉徴収票は、転職時に提出を求められます。
そしてこの源泉徴収票は、転職前の企業からもらうものです。
では、この源泉徴収票は、どうすればもらえるのでしょうか。
退職日から1ヶ月以内に基本的にはもらえる
転職の都合などで年の途中で退職する場合、一般的には退職日から1ヶ月以内に源泉徴収票をもらうことができます。
具体的には、以下のどちらかの手段であなたの元に届きます。
- 退職日に直接渡される
- 退職時に指定した住所へ郵送されてくる
前職の会社から源泉徴収票をもらえない場合の対処法とは?
普通は退職後にもらうことができる源泉徴収票。
しかし、なかなか手元に届かない場合もあります。
具体的に、どのようなケースがあるのでしょうか。
また、なかなか源泉徴収票がもらえない場合、どうすればいいのでしょうか。
源泉徴収票を送付してくれない場合
人事部門が忙しさなどを理由に、手続きを先延ばしにしているケースもあります。
このような場合、企業の人事部に連絡をし、催促しましょう。
いきなり電話して催促をするよりも、メールや手紙などでまずは一度伝えてみましょう。
退職してから1ヶ月たっても源泉徴収票を送ってくれない場合、税務署に相談するのも一つの手段です。
最終的な手段となりますが、「源泉徴収票不交付の届出手続き」を提出すれば、税務署は企業へ行政指導をし、源泉徴収票の発行を強制することができます。
源泉徴収票の送付が間に合わない場合
このように、転職前の企業が源泉徴収票の発行をしてくれないということは、ほとんどの場合ありません。
しかし、タイミングが遅く、年末調整までに源泉徴収票を提出できないことはありえます。
その場合、どうすればいいのでしょうか。
その場合、転職先にその旨を伝えて、指示を仰ぎましょう。
源泉徴収票を期日通りに提出できず、会社が年末調整を行えない場合でも、自分自身の手で納税額を計算する「確定申告」を行うという手段もあります。
もらった源泉徴収票を捨てた・なくした場合は?
ちなみに、源泉徴収票を誤って捨てたりなくしたりしてしまう場合もあります。
このようにして、一度発行してもらった源泉徴収票が手元にない場合は、前職の会社に連絡し、再発行を依頼しましょう。
源泉徴収票の発行は義務付けられていますので、再発行にも対応してくれますよ。
最悪、源泉徴収票を提出しなくてもいい方法もある
ここまで解説したように、源泉徴収票は転職先の企業に提出すべき書類です。
ですが、源泉徴収票の送付が間に合わない場合は、会社には源泉徴収票を提出せず、自分で確定申告をすることでも対処できます。
このように、源泉徴収票は必ず転職先に提出しなくてはならない、というわけではありません。
このことを応用し、諸事情により転職先に源泉徴収票を提出したくない場合は、提出せずに済ませる、という選択肢もあるんです。
「転職先に源泉徴収票を提出したくない!」どんなケース?
転職先に源泉徴収票を提出したくないケースとは、具体的に、どのような状況が考えられるのでしょうか。
前職について知られたくないことがある
源泉徴収票に記載された会社名など、前にしていた仕事について知られたくない場合が挙げられます。
たとえば転職前に水商売をしていた場合などです。
わざわざそのようなチェックをする人はいないように思えますが、可能性としては否定できません。
副業をしていることを知られたくない
転職先の会社が副業を禁じているにも関わらず、隠れて副業している場合、副業先の源泉徴収票は出したくないですよね。
休職中であることを知られたくない
前職の会社を休職中であったことを転職先に隠したい場合もあります。
源泉徴収票には、収入や源泉徴収額の記載がありますので、このような場合、源泉徴収票を渡すと「在職期間の割に給与が低いな」と怪しまれてしまいます。
前職から源泉徴収票をもらえないからという理由で、自分で確定申告を行うことも可能
このようなケースに該当する場合は、源泉徴収票を提出したくない、と思うこともあるでしょう。
たとえば副業や休職の場合、源泉徴収票を渡さなくても、住民税の算定など、他のタイミングでばれることも考えられます。
住民税に関しては会社ではなく自分で納めることもできますが、隠し事は基本的におすすめできません。
ただし、可能か不可能かで言うと、源泉徴収票を転職先に渡さないことは可能です。
その場合は、転職先企業に「前職から源泉徴収票がもらえず、年末調整に間に合わない」と説明して、自分で「確定申告」を行うことになります。
確定申告を自分でやるには
確定申告を自分でやる方法は知っていますか?難しそうなイメージのある確定申告ですが、手順をマスターすれば簡単です。
分からないという方は、こちらの記事をじっくり読んでみてください。
まとめ
この記事では、そもそも源泉徴収票とは何か、転職時になぜ源泉徴収票を提出する必要があるのか、転職先に源泉徴収票を提出できない場合どうするか、などについて解説しました。
源泉徴収票を転職先に提出できない・したくない場合は、自分で確定申告をすることで回避することもできます。
「確定申告を自分でしなければならないけど、手続きはちょっと面倒くさいな……」と思う方は、確定申告freeeを活用すると、スムーズに終わりますよ。




監修者によるコメント
私もfreeeを活用して毎年確定申告を行なっていますが、操作も非常にわかりやすくてとても使いやすいシステムとなっています。転職での一時的な利用かもしれませんが、初めての方でもストレスなく使えますのでオススメです。