ECモールのCPAを1/2に削減!外部マーケターが導いた販促最適化と利益率UPの裏側

株式会社BuySell Technologies

EC事業において、販促費のコストを削減しつつ売上を伸ばし、利益率の向上を目指すことは、多くの企業が向き合っているテーマでしょう。特に、自社ECやECモールなど複数のECを運営している場合、各媒体の特性に合わせた戦略が求められます。
株式会社BuySell Technologiesは、着物やブランド品のリユース事業を手がけ、自社ECとECモール併せて8つのECサイトを運営しています。同社も、EC事業の売上拡大と利益率向上において課題を抱えていました。
そこで、ミエルカコネクトを通じて外部マーケターの支援を受け、データ分析に基づいた施策を実行。その結果、楽天ECモールにおけるCPC*は3割、CPA*は約1/2に削減するなど、大きな成果を上げました。
どのように外部の専門人材を活用し、EC事業の成長につなげることができたのか。その具体的な取り組みの裏側を、株式会社BuySell Technologies EC事業部セールスプロモーション課 課長の岡村茜さまと、サブマネージャーの志賀亮佑さまに伺いました。
*CPC:広告のクリック単価、CPA:顧客獲得にかかる費用
EC運営に漠然とした課題感も、改善の道筋見えず
――貴社の事業内容と、お二人のご担当や役割について教えてください。
岡村様:弊社は着物やブランド品等のリユース事業を手がけています。お客様のご自宅に直接伺う訪問買取を行っており、買取させて頂いた品物を複数の販路での販売を通して、これまでお客様が大切にされてきたものを新しい方へお繋ぎしています。

岡村様:私たちEC事業部のミッションはEC販売をしているストア全体のボトルネック改善に注力して、売上・利益を最大化していくことです。
そのために、日々、プロモーションの戦略設計やクーポンの設計、特集の企画立案といった、広告・販促の最適化を行っています。

――貴社ではミエルカコネクト導入以前、どういった課題を抱えていたのでしょうか?
志賀様:売上・利益最大化のために、ECモールと自社ECのそれぞれに課題がありました。
まず、ECモールに関しては、販促コストの削減が重要なテーマとなっていました。当社が運営するECモールの中では、特に楽天市場のストアの売上が大きな割合を占めています。楽天市場では広告やクーポン配布、値引きなどの施策に多くの予算を費やしており、その結果、利益率が低くなっていました。そこで、楽天市場でのコストのかけ方を見直し、販促費の最適化を図ることで、EC事業全体の利益率向上を目指したのです。
しかし、予算を削減しても売上が下がってしまっては意味がありません。EC事業全体の売上を大きく左右する楽天ECなので、根拠をもって慎重に改善する必要があると考えていたため、社内の知見だけでは実行に不安を感じていました。
岡村様:一方、自社ECに関しては、利益率の高いチャネルであることから、今後さらに成長させていきたいという思いがありました。しかし、どうすれば今以上の成長を実現できるのかや、他のECモールとの差別化を図れるのかについて、社内で考えている方針が正しいのか自信を持てずにいました。
そこで、社内で「外部の専門家の知見を取り入れるべきではないか」という議論が持ち上がりました。すでに一部の業務では外部のマーケティング会社に支援をいただいており、その活用によって社内の経験や知見だけでは補いきれない部分をカバーできる実感がありました。
こうした背景から、専門的な視点を取り入れるため、外部人材の活用を決断。その際にご縁があったミエルカコネクトさんに相談したところ、マーケターの矢座さんを紹介いただき、支援いただくことになりました。
――矢座さんにお願いしようと考えた理由をお聞かせください。
岡村様:楽天の利益率改善が主な目的だったことから、楽天に強いマーケターさんにサポートいただきたいと考えていましたので、楽天で働かれていた経験のある矢座さんはぴったりでした。
また、契約前に実施した、ミエルカコネクトさんと矢座さんとの面談の場が特徴的でした。マーケターの方からの自己紹介やアピールをする場というより、当社の課題をヒアリングしてくださる場となっていたのです。そこで矢座さんが端的に改善点を提案してくださったのがわかりやすいと感じて、お願いしたいと思えたのも大きいです。
ここまで当社の課題解決にぴったりはまる方に出会うのは簡単ではないと思っていたのですが、今回ミエルカコネクトさんにお願いして、すぐに適任の方をアサインいただけて、大変助かりました。
参画マーケタープロフィール | |
---|---|
![]() |
矢座 寛人さん新卒で楽天グループ株式会社に入社し、個人事業主から大企業まで、延べ1,000社以上のEC事業を支援。Rakuten Shop of the Year総合賞1位を受賞する企業様の支援経験や、個人でも所属グループ500名の中から年間MVPを受賞。その後、コンサルファームに転職し、経営戦略策定や新規事業創出に従事。現在は独立しCrest Works合同会社を起業。綿密な調査・分析をもとにした戦略設計や実行支援が強み。 |
プロのデータ分析で見えた、改善への確かな手がかり
――外部マーケターの矢座さんが支援に入ってから、どのような取り組みを実践されたのでしょうか?
岡村様:先ほど申し上げた、「楽天市場のストアの販促コスト最適化」と「自社ECの伸長」という課題に対し、より事業インパクトの大きい楽天のECを優先して改善することにしました。矢座さんはもともと楽天でEC事業者の支援をしていた方なので、心強かったですね。
現在のコストと売上の数値を矢座さんにお渡しし、データの分析をしていただいた結果、2つの点の改善案を提案いただきました。
一つ目は「商品別ポイント」の運用です。楽天市場では、商品ごとに楽天ポイントを付与する倍数を設定できるのですが、当社ではすべての商品に対して同じ倍率のポイントを還元していました。しかし、ポイントの付与によって売上がどれくらい変化するかを示す「ポイント弾性率」という指標を矢座さんから教えていただき、その指標でデータを見てみると、「着物と帯」や「カメラ」のカテゴリでは、ポイント還元率の違いによってあまり売上が変わらないことが明らかになったのです。
この分析結果に基づき、商品カテゴリごとにポイント弾性率に応じた最適なポイント付与となるよう設定しました。この施策は、設定を変えるだけなので大きな手間もなく、すぐにコストの最適化につなげられるものでした。

また、「RPP広告(楽天市場内の検索型広告)」の運用改善にもご支援いただきました。楽天のアドサポートデスクに運用をお任せしているのですが、これまではROASの目標数字しか設定していなかったんです。そのため、ROASは問題ないものの、CPCが高すぎるのではないかという指摘を矢座さんからいただきました。
弊社が扱う中古商品という特性上、CPC・CPAをかけて一つの商品を特定のターゲットに向けて訴求するよりも、多くの商品をたくさんのユーザーに見てもらえるように、CPCを抑えた運用の方がよいだろうとアドバイスを受けました。そこで、CPCとCPAの目標値を設定し、それぞれの数値をできるだけ下げるよう運用を依頼しました。
他にもCPCを下げる動きとして、過去3ヶ月間の商品販売のデータを見ながら、売上が伸びていない商品は広告の対象から除外するといった取り組みを行っていきました。
このポイント付与とRPP広告については、特にコストがかかっている施策だったので、改善した方がいいだろうという感覚はあったものの、具体的な実践に落とし込めていませんでした。しかし、今回矢座さんにサポートしていただいたことで、データに基づいた判断ができ、改善につながりました。

――もう一つの課題である自社ECの強化のためには、どのような取り組みを実施されましたか?
志賀様:同じ商品を複数のECサイトで販売している中で、会社としては自社ECの売上を拡大したいという意向がありました。自社ECは手数料がかからない分、利益率も高くなるため、自社ECの売上割合が上がればEC事業全体の利益率改善につながるからです。
自社ECの価値を強化するためには、通常、価格面での差別化も考えられます。しかし、私たちが取り扱う中古品はすべて一点ものであるためモールごとに価格の差をつけることは難しい。その特性を加味して、どのように自社ECならではの価値を作っていくかが課題でした。

そこで、矢座さんに分析してもらったことは、購買データ分析や4P観点からの自社ECとECモールの強みの整理でした。それにより、自社EC独自の価値を創出するために「展開商品や販売開始タイミングの最適化」と「会員プログラムの見直し」という2つの改善策を提案いただきました。
元々当社では、自社ECの価値を高めるために、自社ECで1日先行出品したのちに、外部のECモールに掲載するという戦略をとっていました。その適切な期間を導き出すために、出品から注文に至るまでの在庫の滞留期間から分析してみると、商品によっては、自社EC内で通常価格で売れる可能性が高い傾向があるとわかりました。そのため、自社サイトで売り切るためには、もっと長く先行出品期間が必要だと明らかになったので、現在その運用方針に向けて動いています。
これまでも、この販売タイミングの差をどのくらいの期間にするのが最適なのか、社内で課題となっていたところを、エビデンスをもとに判断できたことが非常に良かったです。

また、もう1つの改善として顧客育成の鍵である会員向けポイントプログラムの変更案を策定いただきました。
着物専門のEC「バイセルオンラインストア」ではこれまでブロンズ・シルバー・ゴールドとランク分けをしていたものの、上手く機能していないところがありました。そこで矢座さんは、会員ランク別の購買金額や購買回数、リピート率などを掛け合わせて分析し、特定ランク会員のナーチャリングを目的としたポイント還元企画や、会員変更条件の見直しなどが必要と提案をくださいました。こちらもこの分析結果と提案を基に、ポイントの仕組みの改善を行っている最中です。
事業特性に寄り添った提案が、成果への近道に
――こうした実践を経て、これまでにどんな成果が得られましたか?
岡村様:定量面で言うと、楽天市場の運用コストが最適化され、ROASを維持したままCPCは-42%、CPAは-53%まで下げることができました。当初の課題であった販促の効率化がこの短期間で実現できたことは、大きな成果でした。
また自社ECに関しては、弊社の事業特性に沿って、価値を強化する戦略を打ち立てることができました。他ECモールとの差別化ポイントが明確になったことで、商品の展開タイミングの調整など、具体的な改善に着手することができています。


定性面では、私たちが感覚的に「こうした方がいいだろうな」と想像していたポイントを、矢座さんが客観的な視点とデータという根拠を持って、指摘してくれたことが大きな収穫でした。どう改善するべきか迷っていた部分が、納得感を持って実行に移せる状態になったのがよかったですね。
志賀様:さらに、データの見方に関して、たくさんの知見を得ることができました。一つの商品やカテゴリだけに注目するのでなく、商材軸や商品金額軸など、複数の軸をかけ合わせてデータを分析することで、新たな発見ができるのだと実感しました。例えば「ポイント弾性率」など、これまでになかった指標でデータを見るという、新しい視点も導入されました。
また、そういったデータ分析の手法を惜しみなく共有いただいたので、私たちの理解も深まりました。矢座さんがデータ分析のテンプレートを作成し、トレーニングまで実施してくれたので、現在では社内のメンバーもデータを掛け合わせた分析を実践できるまでになっています。
――マーケター矢座さんとの取り組みを振り返って、特によかったポイントをお聞かせください。
志賀様:まず、中古品のリユース事業というやや特徴がある事業特性まで理解した上で、様々なアドバイスをしてくださったことに、非常に満足しています。通常のECサービスであれば複数在庫があるのに対し、当社の一点ものだからこその事業展開の難しさを加味してくださいました。
また、今回の依頼はEC事業部の支援でしたが、データ分析や改善プランを決めていく上で、弊社の事業全体を考慮して提案いただけたのがよかったです。
例えば、当社はtoCだけでなくtoB向けにも中古品を販売しており、自社EC、ECモール、店舗、そしてtoB向けの卸売と、複数の販路があります。その中で、商品別の粗利差をデータで出した際に、私たちのEC事業の管轄にとどまらず、バイセル事業全体を考慮したうえで「粗利率の低い商品ジャンルは最初からtoBで販売した方がよい」と提案してくださいました。このように、会社全体の売上・利益改善に貢献していただけたことがありがたかったです。
岡村様:加えて、組織体制などの社内の事情も理解して支援してくださいました。EC事業部は当時われわれ二人と、数人で運営しており、リソースが限られていました。
実は、分析を依頼する際も、ローデータをそのままお渡ししていました(笑)。本来であれば、データが分析しやすいようにきれいに整っているものをお渡しするべきだと思うのですが、そういった加工をする余裕もなかったのです。矢座さんは、そのような社内状況を加味して、複数のファイルを自身で突き合わせて分析を進めてくださり、わかりやすいアウトプットにしてくださいました。
自身が持っている知見をそのまま適用するのではなく、バイセルの事業と社内の状況を理解したうえで、寄り添った形で提案してくれるのはありがたかったです。
志賀様:さらに、矢座さんが楽天市場のECにおけるデータ領域に詳しいことも心強かったですね。各ECモールごとにデータの特徴があるため、どのように集計・分析をしたら良いか事業者サイドではわからないことも多々あります。その点、矢座さんは楽天市場のデータの独自性を把握しており、専門的なサポートをしてくださいました。これは以前楽天の中にいた方だからこそ、のノウハウだと感じました。
――とても効果的なお取組みとなった印象ですが、外部マーケターとのやり取りにおいて、お二人が大事にしていたポイントはありますか?
志賀様:矢座さんに物事をお伝えするときには、変に隠さず正直にお話ししていましたね。
岡村様:そうですね。矢座さんの提案の的確さを信頼していたので、最大限その力に頼りたかったんです。些細な疑問もすべて投げかけてみたことで、有意義な提案をいただけたのかなと思います。
――最後に、今後の展望をお聞かせください。
岡村様:バイセルが取り扱うのは中古品であり“一点もの”です。一点一点の商品を適切な売り方でお客様に届けていきたいという思いがあります。その中で、販促のコストの最適化や自社ECの成長が、EC事業部としてできることの一つだと考えています。
自社ECに関しては、今回の矢座さんとの取り組みをきっかけに、自走できる組織体制がつくられ、改善施策が動き出しました。これから実運用を重ねながら、よりよい自社ECへと成長を促進していければと思っています。
――本日は貴重なお話をありがとうございました!
編集者情報 | |
---|---|
![]() |
株式会社Faber Company
|
記事掲載日: