日本初上陸アトラクションをどうPRする?イオンモールキッズドリーム社の新規事業立上げに外部人材が伴走して「話題化」させるまで
イオンモールキッズドリーム合同会社
テーマパークの企画・運営を手掛けるイオンモールキッズドリーム合同会社では、2024年4月に新規事業として、VRアトラクション「DIVR IMMERSIVE ARENA(ダイバーイマーシブアリーナ)」を開業しました。
しかし、日本初上陸*の新しいアトラクションということもあり、限られた予算の中で、事業計画を達成するための販促プロモーションをどのように仕掛けていけばよいか、社内に十分な知見がなく困っていました。
そこで同社は、「ミエルカコネクト」を活用し、某大手テーマパークをV字回復に導いたマーケターをチームに引き入れることに。顧客インサイトを掴んだ的確な価値設計により、キー局の情報番組に8回取り上げられるなど反響を呼び、来場者を増やすことに成功しました。
マーケティングや人材採用について新規事業ならではの課題を抱えていた同社。その課題を解決した本取組みの裏側について、イオンモールキッズドリーム合同会社 代表の末松央行さまと、事業推進者の織本真紀さまに、ミエルカコネクト事業責任者片山とともにお話を伺いました。
* VRアトラクション「DIVR IMMERSIVE ARENA(ダイバーイマーシブアリーナ)として
新規事業を成長戦略の柱に。日本初上陸のVRアトラクション開業
――今回、新規事業を立ち上げることになった背景を教えていただけますか?
末松様:弊社は、イオンモール株式会社が100%出資している合同会社です。イオンモール幕張新都心の中にある「カンドゥー」という仕事体験テーマパークを運営しており、今年の7月には、イオンモール新利府に2店舗目がグランドオープンしました。
コロナ禍を経験したこともあり、今後の成長戦略として、カンドゥーの店舗展開はもちろん、カンドゥー以外の柱となる事業を立ち上げていくことの必要性を感じ、現在、複数事業のポートフォリオを構築し、さらなる成長を目指しているところです。
その新規事業の一つ目として、VRアトラクション「DIVR IMMERSIVE ARENA(ダイバーイマーシブアリーナ)(以下:DIVR)」を開業することになりました。
――「DIVR」はどんな特徴をもったアトラクションなのでしょうか?
末松様:「DIVR」はチェコの企業が立ち上げたコンテンツで、VR業界のアカデミー賞と言われているVRアワードのファイナリストに3年連続で選出された実績をもつアトラクションです。アジアに展開するにあたって当社にお声がけいただき、日本で初めての展開が決まりました。
末松様:日本でもVRを使ったアトラクションやテーマパークが増えていますが、「DIVR」の特徴はリアルな世界を自分の足で歩いて回れるという「圧倒的な没入感」。VRゴーグルを通した映像は非常に美しく、ヘッドセットからの音響や、装着したベストからの振動も合わさって、豊かな4Dの体験ができる。こうした新しい体験が好評です。
片山:先日私もプレオープンにご招待いただき、襲いくるゾンビの銃撃ミッションに挑む「Last Stand」を体験したのですが、本当にゾンビがいる世界の中を歩いている感覚でした。ゴーグルを通して見えてる映像だと思っていた鉄格子に、手を伸ばすと本当に触ることができたのが、すごくリアルで驚きました。
末松様:ありがとうございます。また、「カンドゥー」も「DIVR」も類似施設がある中で、コンテンツ自体の魅力ももちろんですが、当社の強みは「人」です。イオングループは小売業を母体に広がってきた会社。扱う商品が食品であれデジタルコンテンツであれ、お客様に快適に過ごしていただくための接客にこだわっています。
課題は、戦略から設計できる人材の不在。新規事業ゆえに、採用にもリスクが
――今回、新規事業立ち上げにおいて、どういった課題があったのでしょうか?
末松様:「DIVR」を織本と2名で立ち上げることになり、事業計画は立てたものの、計画通りにいくのか不安でした。特に、限られた予算でどのようにプロモーション戦略を立てていくべきか、知見がなく困っていました。
そもそも弊社にはマーケティング部署というものがなく、社員も半数以上が店舗スタッフとして採用されたメンバーですので、マーケティングの専門的知見のある人材はいません。その状況下でも既存事業の「カンドゥー」であれば、すでに認知もとれていて、これまでのマーケティング活動の数字実績もあるので、それをもとに施策を考えたり、改善したりできます。
しかし、「DIVR」のような新規事業となると、どうプロモーションを打ち認知をあげていけばいいのか、最初の販促活動は何をすべきかなど、一から考える必要があり、既存事業とは違う難しさを感じました。新規事業で予算も限られていたため、ミニマムでテストしていきたいという思いもありました。
織本様:私自身もスポンサー獲得の営業をメインに担当しており、マーケティングは専門でやってきた分野ではありません。そのため、新規事業を立ち上げるにあたってどういうコンセプトや目標を立て、そこに向かってどうアプローチしていけばいいのか、全体戦略を描くのが難しいと感じていました。手段として一つ一つの施策は考えられても、その手前でまず何から考えればいいのかに戸惑っていましたね。
また、営業や販促活動だけでなく、施設の設計施工や、オペレーション構築などやることが多岐に渡り、それを末松と2人で進めていたため、リソース面も課題でした。
――新規事業では予算もリソースも限られた中で成果を求められると思います。知見不足をどのように解決をしようと考えていましたか?
末松様:このままでは前に進まないため、専門的知見をもつ人材を採用するか、外部の会社に頼ることを検討し始めました。しかし、PR代理店やコンサルに頼ろうにも、リソース自体が足りていないことから、協力会社と上手く連携して物事を進められるイメージが持てませんでした。
また、中途採用や、親会社からの異動の依頼も検討しましたが、新規事業ゆえ、成果が出なければ撤退もあり得る。そこへ正社員を一人採用するのはリスクも高いですし、採用には時間もかかるため、現実的ではないと判断しました。
――なるほど。それで外部人材の活用を検討されたのですか? ミエルカコネクトにご相談いただくことになった経緯を教えてください。
末松様:実は、御社のようなマーケティングの外部人材活用サービスがあること自体知らなかったんです。外部人材といえば、エンジニアやデザイナーのイメージがありましたが、営業の西田さんからご紹介され、初めてマーケティングも業務委託できるサービスがあるということを知りました。
西田さんとは、約1年前に展示会でお会いしてから、定期的に今困っていることや現状について相談していました。まだ「課題」として明確になっていない「悩み」の段階から相談できて頼りにしていたんです。今回もふわっとした悩みから、その解決策としてミエルカコネクトを紹介いただきました。業務委託という形でプロフェッショナル人材を活用するという新たな選択肢を教えていただき、興味を持ちました。
株式会社Faber Company
|
元USJの稀有な人材とマッチング。初めての外部人材活用でも課題にぴったりな人材と出会えたワケ
ーー今回貴社が求めていた人物像はどのようなものでしたでしょうか?
末松様:新規事業なので、単にマーケティングに知見があるだけではなく、マーケティング思考を持ちながらビジネスを立ち上げていくこともできる人を求めていました。私たちも知見のない中なので、依頼が曖昧になってしまうところを上手くキャッチアップし、具体的に解決に向けてリードしてくれるような方がいないかとご相談させていただきました。なかなか難易度の高い要望だったと思いますが、まさに弊社の課題感にマッチした人材を紹介してくれました。
片山:上記のご希望に加え、「DIVR」のようなエンターテインメント業界の事業モデルは、プロモーションとしても特殊な領域です。紹介するマーケターを選ぶ際、大手のエンターテインメント企業の経験は必須だと考え、元USJのキャリアを持つ後藤さんならと確信して紹介いたしました。
マーケター 後藤 香子さん新卒で経営コンサル会社に入社後、USJ、17LIVEを経て独立。USJではハロウィーンやハリー・ポッターなどのイベント集客をはじめ、V字回復企業としてのブランディングに貢献。17LIVEでは、マーケティング&PR部門の立ち上げからライブ配信市場の確立に尽力。その後、エンタメ・製菓・鉄道・小売など幅広い業界でマーケティング戦略設計支援を行っており、戦略策定からプラン実行までの伴走型支援が強み。 |
――実際に後藤さんを紹介されたときの印象を教えてください。
末松様:やはり、USJのマーケティングチームにいた経歴には非常に興味を持ちました。数字に強く、精度の高い仮説立てをしていただけそうだなと。
また、現場を経験されているので、理論・理屈だけではなく、現場で物事を動かす難しさもわかっているだろうと想像しました。コンサルタントとして教えてくれるだけでなく、現場に寄り添い伴走してくれるような人が合うのではと考えていたので、その点の深い理解と、一緒に走ってくれるだろうなという期待がありました。
後藤さんに面談でお会いした時に、ご提案いただいた内容や能動的に参加いただいた様子に、非常に好感を持ちました。面談後、後藤さんに参画いただけるようすぐに予算を調整したんです。
――2週間後には稼働開始というスピード感でしたよね。紹介から面談までミエルカコネクトのサポートはいかがでしたか?
末松様:マーケターさんとの面談も、事前に弊社の課題をマーケターさんにしっかりと伝えた上で、ミエルカコネクトさんが間に入り会を進行してくださるので、こういったサービス利用が初めての我々にとっては、安心感がありました。何を軸に決めればよいかわからない中で、マーケターさんの能力や魅力を私たちにもわかるように提示してもらえたのがよかったです。
ミエルカコネクトで抱えている人材が優秀なことに加え、それを企業に丁寧に紹介するスキームがうまく整っていると感じました。
片山:そう言っていただけてうれしいです。弊社ではマーケターの面談を、業界歴約20年の役員やベテラン社員が担当し、知見がないと評価が難しいマーケティングスキルを見極めています。稼働後にいただくレビューや空き状況などのマーケターの情報は、日々社内で共有し合っているので、企業からの相談にマッチするマーケターがいれば、すぐに紹介できるようになっています。
影響力の高い情報番組で8回も紹介。顧客インサイトから設計した「響くコンセプト」が奏功
――後藤さんが入られたことで、貴社のマーケティングにおいてどんな成果がありましたか?
末松様:まず、今回の「DIVR」新規開業に向けてやるべきことの、全体の道筋を立てることができました。具体的には「ターゲットの明確化」「コンセプト設計」「プロモーション戦略設計」の3つについて、後藤さんにリードしていただきました。
織本様:特にコンセプト設計について、後藤さんに伴走いただき、非常に勉強になりました。
「DIVR」が海外のコンテンツなので、そのまま打ち出すのではなく、まず日本人がどう感じるか、何に興味を持つかを明らかにしたうえでコンセプトにつなげる必要があるということで、「VRアトラクション」に関するアンケート調査から実施しました。まずはそういった日本独自のコンセプトを立てないといけないのか、という気づきがありました。
末松様:また、プロモーションには、「DIVR」のコンテンツにさまざまな魅力がある中で、打ち出すべき魅力は何か、どこに徹底的にフォーカスするべきなのかの見極めこそが重要です。そこにもプロの視点を感じました。
私たちだけで考えていたときは、「没入感」や「リアル」「今までにない体験」といった特徴にフィーチャーしていたんですね。しかし、後藤さんからは「日本初上陸」をメインに謳うべきだと言われたんです。顧客分析の結果や、新しい施設やお店がメディアに取り上げられている様子からも、初物としての価値にこだわるべきだと言われ、なるほどと思いました。
そこから、後藤さんに複数のメッセージを作っていただき、ユーザーインタビューを実施してみると「世の中の人はここに注目するんだな」「逆にここは気にしないんだな」といった発見があり、その顧客の声をきちんと数字で示していただけたので、根拠を持って訴求のメッセージを定められました。
ーー分析の結果をもとに作り上げたコンセプトとメッセージなのですね。反響はどうでしたか?
織本様:今回の開業時に、影響力の高いキー局の情報番組に計8回取り上げていただくことに成功し、期待を越える反響でした。他にもネットニュースや個人ブログ、個人SNSなどでも話題にしていただいています。
取り上げられたメディア
フジテレビ「めざましどようび」(2回)、「ノンストップ」
日本テレビ「DayDay」「ズームインサタデー」
テレビ神奈川「ハマナビ」「トレハン」「AKB48研究生のWOW」
この反響からも、ここで導き出してもらった「世界が認めた、本物の非日常体験。日本初上陸!」という価値の打ち出し方は、正しかったのだと実感しています。「DIVR」の魅力を適切に打ち出すためのコンセプト設計とメッセージは、後藤さんなしでは良いものができなかったと思っています。
――他に、後藤さんの伴走支援において良かった点はありますか?
末松様:クリエイティブ制作においても尽力いただきました。今回日本版のビジュアルを一から作成したのですが、実は、VRアトラクションであるにもかかわらず、メインビジュアルのモデルはVRゴーグルをかけていないんですね。
これは後藤さんによる「ゴーグルの中で展開されている世界を表現しましょう」という提案からできたものでした。また、施設の設計施工にも顔を出していただいて、「ここにはPR動画を流すモニターがほしい」といった現場での見せ方も細かくアドバイスをいただきました。
現在、店頭の動画やポスターを見て足を止めてくれるお客様がいらっしゃるので、目を惹くクリエイティブを実現できたんだなと実感しています。
マーケター 後藤 香子さん『マーケティングを行う中で最も重要な「ターゲットの明確化」「コンセプト設計」が未着手の状態だったので、お客様インタビューとツールを用いた消費者アンケートから、戦略のWHO/WHAT部分を明確化させることからスタートしました。 工夫したのは、DIVRの世界観を維持しつつ、日本の消費者の心に響くようなクリエイティブです。モデルにはVRゴーグルをあえて使用せず、モデルの表情や背景に使うシーンの選定にも非常にこだわりました。 また、もう一つ注力したのがメディア戦略です。エンタメ領域ではいかにメディア露出を通じてアトラクションの体験価値を伝えるかが重要。イオンキッズ様がカンドゥー運営で構築されていたリレーションを活用し、営業活動や継続的なニュース発信を行うことで、最も集客が増えるGW前に多数の全国番組にて取り上げてもらうことに成功しました。』 |
――最後に、今後の展望や、取り組み全体を振り返っての感想をお聞かせください。
末松様:「DIVR」のマーケティングについて、後藤さんと一緒に全体の戦略・道筋を立てることができ、狙い通りの反響をつくることができました。これからは次のステップである実行フェーズに移っていくので、SNSを活用したブランディング施策などを愚直に回していき、継続的にお客様に遊びに来ていただけるアトラクションにしていきたいと考えています。
また今回、マーケティング業務において「外部人材」を活用するという新たな選択肢を知りました。ミエルカコネクトは、自社で専門人材を抱えることなく、プロジェクト単位で利用できる点や、自社の採用では出会えないような、稀有で優秀な方を紹介いただける点が、大変魅力的だと思いました。
経営の視点で言えば、優秀なマーケティング人材を自社で採用するにはコスト面やスピード面から難しいケースもあります。こういった痒い所に手が届く人材サービスがあることが、もっと知られるといいなと思います。
著者情報 | |
---|---|
株式会社Faber Company
|
記事掲載日: 記事更新日: